桜色の海に恋は沈みて

物思いに耽ることは海に潜ることに似ている気がする

消極的自傷

「消極的自傷

 僕がひどく体調を崩していたときのこと。

 薬を飲まなくなった。ご飯を食べなくなった。眠らなくなった。誰にも頼ろうとしなかった。

 助けてと言うことすら許されない感覚。

「僕は苦しんで当然だからこのままでいい」という嘲笑を僕自身に浴びせ、何もしなかった。 苦しんで当然。そのままでいい。お前なんかどうなったって構わない。

 

 ネットで「消極的自傷」という言葉を見つけたのも同時期だった。

 対義語である「積極的自傷」とはよく想定されるオーバードーズリストカットなど、自ら自分に危害を加えることだ。マイナスを与えるとも表現できる。

 では「消極的自傷」とは何か。

 一言で言うならば、マイナスでいることから回復しようとしないことだ。

 体調が悪くても何もしない。悪いままでいる。そして自然に悪化させる。

 お腹が空いていても食べない。拒食のようでもあるが、激しい拒絶ではなくただ食べようとしない。

 眠くても眠ろうとしない。眠ることは現実逃避だからしてはいけないと自分に命令する。

 困っていても誰にも頼ろうとしない。自分が苦しんでいてもそのままでいい。

 悪い状態のまま何もしない。

 セルフネグレクトとでも言おうか。自身の不調への対処を放棄するのだ。

 

 薬を飲むことを拒んだ僕は当然のごとくぼろぼろになった。それでも誰にも頼らずひとりで病魔に苦しんだ。苦しんでいることが当然だと笑いながら。

 入院することなり、やっとの思いで主治医に話すと「自分を大切にできるのは自分だけだ」と至極当然のことを言われた。

 自分を大切にできないことも、自傷行為なのだ。