桜色の海に恋は沈みて

物思いに耽ることは海に潜ることに似ている気がする

カミングアウトの最適解

 僕はマイノリティ、少数者と呼ばれる部類の人間だ。精神障害者発達障害者というマイノリティ。性や恋愛のあり方も少数派でセクシャルマイノリティと呼ばれる。

 少数派であることや秘密にしていることを打ち明けることを「カミングアウト」という。僕が関わってきたセクシャルマイノリティの人たちの間では略して「カム」とか「カムア」と言うこともあった。

 カミングアウトすることに対して多くの人は「カミングアウトすることを受け入れてもらえるだろうか」という不安を抱く。

 ゲイの友人は母親にゲイであることをカミングアウトしたらここでは書くことを憚られるほどの酷い仕打ちに遭った。僕自身もバイセクシャルであることを友人に話そうと切り出したら「そういうの興味ないから」と心底馬鹿にした笑いを浴びせられたことがある。

 このようにカミングアウトすることで傷付くような反応を貰うことは少なくない。

 もちろん言わなければ伝わらないから言うのである。異性愛者であるという決めつけに萎縮したり、精神障害の症状で配慮が必要なことをお願いできなかったりしたら困るのだ。

 しかしカミングアウトをされたらどう反応したらいいのか分からないという声はよく聞く。どうしたら傷つけないのかカミングアウトされた側も考えている。そして分からなくて困っていた。

 僕なりにカミングアウトをどう受け止めたらいいのか考えてみたけれど、うまく言葉にできなかった。

 

 自閉症スペクトラムがあることを初めてカミングアウトした相手は行きつけの本屋の店主だった。店主さんは店内に所狭しと並んだ本の中から僕の好みの本を見つけ出したり、最新のサブカルチャーを教えてくださったり、他に客がいないときはゆっくり雑談をしていることもあった。

 自閉症があるのだと分かってから初めてその本屋へ行ったとき、僕は意を決して自閉症と診断されたと話した。特に意図はなかったけれど、話してみたくなったからだ。

 どう言われるのかは予想つかなかった。いささかの不安もあった。

 店主さんはあっさりと「そうなんだ。それで困っていることはある?」と僕に尋ねた。

 あ、これだ。と僕は思った。

 僕は「まだ診断されたばかりで分からないけれど、大丈夫です」と答え、聞いてくれてありがとうと伝えた。

 カミングアウトするのはその特徴があることで困っているからという人も少なくないだろう。過剰に褒めも貶しもせず、ニュートラルに受け止めて尋ねる。そんな店主さんの対応に僕は深く感心して学びを得た。

 カミングアウトされたときの一つの答えとして、知っておきたいことだと思った。