桜色の海に恋は沈みて

物思いに耽ることは海に潜ることに似ている気がする

2020-01-01から1年間の記事一覧

同人活動がくれた基盤

『同人活動がくれた基盤』 僕は十八から同人活動を始めた。初めて同人誌を出したのは十九になって少しあとの名古屋コミティア。初めてのことで分からないなりに本を作った。初めてだからと張り切って三種も。それも一冊は成人向け指定の過激な性の物語だった…

悲劇のヒロイン症候群

「悲劇のヒロイン症候群」 「私の方がつらい」と言い放つ人を哀れんでしまう。今日はそういう話。 友人がぼやいていた。 「うつが治ったという人に、それくらいじゃぜんぜんつらくないよ、と笑われた」 友人のぼやきは続く。 「確かに私の方が飲んでいる薬は…

ずるくてごめんね

「ずるくてごめんね」 中学生のとき、僕には身体的に同性の恋人がいた。同じ部活の後輩。髪の長い女の子。 僕は特にそのことを隠していなかった。同性愛が隠すべき物であった時代は、少なくとも僕の周囲では、とっくに終わっていたからだ。 最初は「彼女がい…

消極的自傷

「消極的自傷」 僕がひどく体調を崩していたときのこと。 薬を飲まなくなった。ご飯を食べなくなった。眠らなくなった。誰にも頼ろうとしなかった。 助けてと言うことすら許されない感覚。 「僕は苦しんで当然だからこのままでいい」という嘲笑を僕自身に浴…

自殺未遂した友人に何も言わない僕

「自殺を図った友人に何も言わない僕」 僕の友人が自殺を図ったことがあった。自宅で首を吊って意識不明だと発見した別の友人が代わりにツイートしていて知った。 自殺を図った友人のアカウント、そして知らせた友人のツイート宛てにたくさんのリプライがつ…

普通になりたいって、何?

「普通になりたい、って何?」 セクシャルマイノリティや障害のある人と関わっていると、いわゆる「普通」への憧れをよく聞く。 普通の恋愛がしたい。普通に結婚したい。普通に就職したい。普通の人になりたい。 なんだか、すごいなあと思ってしまう。 そん…

苦しいままでいいのに

「苦しいままでいいのに」 苦しんでいる人はたくさんいる。悲しいことに事実だ。 じゃあ僕は? きっと苦しんでいることに苦しんでいない。中途半端なところにいる。 僕はある疑問を抱いた。 「何故人は苦しみから逃れようとするのだろう」 別に苦しいままで…

破局指輪

高校生のとき、付き合っていた彼氏とペアリングを買った。ショッピングモールの中に入っているロック調のアクセサリーショップで店員さんにサイズを測って貰って選んだ。必要な肉もないほど痩せた彼の指は僕の指より細くて、店員さんは彼にレディースの商品…

違うと理解できない母

2019年、ワールドカップラグビーが日本で行われた。メディアも街も大騒ぎ。ラグビーを扱ったドラマが放送されたり、ラグビー選手がバラエティー番組に出演したり、と大きな盛り上がりを見せた。 そんな中、僕はラグビーが苦手だと言わせてもらえなかった…

ヤンキー少女の正義

「へそピアスは開けないの?」と尋ねたら「開けないよ。殴られると痛いから」と答えた彼女のことを、僕はやっぱり好きだと思った。 彼女とは中学三年生のとき、同じクラスだった。三年生になって最初の日、自己紹介で彼女は「あたし、イジメとか大っ嫌いだか…

カミングアウトの最適解

僕はマイノリティ、少数者と呼ばれる部類の人間だ。精神障害者、発達障害者というマイノリティ。性や恋愛のあり方も少数派でセクシャルマイノリティと呼ばれる。 少数派であることや秘密にしていることを打ち明けることを「カミングアウト」という。僕が関わ…

死んだら忘れられたい僕

一定期間稼働していないTwitterアカウントを自動削除する方針をTwitter公式が発表し、反対する多くの声を受けて取り止めになった。アカウント削除に反対する声を覗いてみると、多くは「故人のアカウントを残してほしい」という要望だった。 「人は二度死ぬ。…

いつだって今が1番

成人式を迎えたのは四年前だ。 僕の成人式は中学校単位で行われ、卒業ぶりに会う人がほとんどだった。というのも僕が中学三年生のときは携帯電話、スマートフォンではなくガラケーと今では呼ばれるタイプのものですら持っている人がクラスに半分くらいの時代…

残酷な「個性」

発達障害のことを「個性」と表現することがある。「障害」という言葉にネガティブな印象を持っている人がよく言う気がする。けれど僕は違う感覚を持っていた。「個性」という残酷な言葉に苦しめられていた。 発達障害の検査を終え自閉症スペクトラムであるこ…

事実と思い込み

僕は運動が苦手だ。走るのは学校で一番遅く、投げられたボールをキャッチできず、泳ぐどころか水に顔をつけることすらできない。成績は三段階ならC。五段階評価の中学では出席点のみの2だった。 そんな僕に対して母はいつも「大人になればできるようになる」…

気ままに生きた日

電車に乗った。街まで一時間。初めて読む作家の詩集を開いて言葉を感じていた。片道で読み終えてしまった。余白が語るものが愛おしいと思った。 駅からつながるビルへ向かい、たまに行くセレクトショップで今まで買ったことのないブランドの福袋を予約した。…

継続が苦手でもいい

──夏休みの宿題。毎日何ページずつやれば終わる。そう計画して終わったことがない。 ──毎日日記をつけよう。一日三行でいい。そう始めて一年続いたことがない。 なにかを続けるということができたことがない人生を歩んできた。必ず挫折する。三日坊主という…

言いづらいけどプレゼントが苦手

誕生日が近付くと憂鬱になる。 僕は持ち物へのこだわりが強い。自閉症スペクトラムの特性のひとつでもあるが、僕固有のことだと認識している。 数年前の誕生日、当時交際していた彼女にボールペンを貰った。繰り出し式の油性ボールペンで、僕のあだ名と彼女…

好きな人に振られようと決めた理由

片思いをしていた。彼はとても言葉が美しくて、可愛らしさの中にセクシーさがある魅力な男性だった。 彼のことが好きだと共通の友人に打ち明けたときのことだ。友人は小さな声で「彼はポリアモリーだよ」と僕に話した。ポリアモリーとは複数人での恋愛関係を…

「許せないことは許せなくていい」の二面性

僕には許せないことがある。何が、とはここでは言わないけれど、それなりに許せないことはある。許せなくてもいいと僕は知っている。 「許してあげなよ」という言葉は他人に向けてはいけない言葉だな、と思ったことがある。 精神疾患がある友人がいた。友人…